Series Duo

古典本曲「大和調子」

大和地方に吹き伝えられた調子。調子とは竹を調べる、調子を整える、という事に端を発し、転じてその場を気息で調べ整える事にも繋がり、尺八の世界では調子に始まり調子に終わるとも云われる程大事とされている。竹音とリンクされるヴィジュアルアートと共演されることで、音の特にはじまりとおわり、そして無音の間が、より鮮明に表現されている。

「獅子」

「獅子」と銘打ったこちらの演奏は、歌舞伎囃子のなかで獅子物と呼ばれる演目のなかで用いられる、囃子の古典的手組である「楽」「乱序」「狂い」を一つに繋げ太鼓一貫にて表現したものである。 「楽」は重厚な清涼山の情景を表し、「露」は静寂と共にその深山幽谷に露がしたたり落ちる様子を描写している。一転し、勇ましい囃子と共に獅子の精が現れ、「狂い」の中で力強く豪快に乱舞する。

琴古流尺八本曲「鹿の遠音」

「奥山に もみじふみわけ なく鹿の 超え聞く時ぞ 秋はかなしき」の一首にも代表される”秋の悲哀の情”は、そのままこの曲の情感とも一致していて、一層いにしえの世界へ呼び戻されるようである。本来は、お互いを求め呼び合う雌雄の鳴き声を二管の掛け合いで表現されるが、一管でも演奏される。今回の竹音と同期されるビジュアルアートとのコラボレーションでは、現代世界において”何かを求める声”を光と影でオーラナイズされているようでもあり、音の明暗、無音と有音と間のダイナミクスが鮮明に拡大されているかのようでもある。

尺八:黒田鈴尊
囃子:望月太満衛
映像:宮本貴史
ディレクション:浅野剛

撮影・編集:Tokyo Media Interaction