Distant Tone

2020年のコロナ禍で、画面を通じて行うリモートのコミュニケーションが急速に日常化する中、以前の生活とは異なる小さな違和感が堆積する日々を過ごす事になる。半ばSF化したコミュニケーション様式に誰もが抱く違和感や軋轢の正体は、現在の感性のみでとらえる事が難しい。敢えて、過去の視座から観察する事を試みた。 ここに、一つの作品がある。琴古流尺八古典本曲の「鹿の遠音」。 鹿同士の対話を、室町~江戸時代の人の感性でとらえた音楽作品である。400年にも渡り古典として位置付けられる本作に内在する対話的なコミュニケーション構造に、今私たちが抱える違和感が何なのかを理解するヒントが隠されていると考えた。今作においては、この「違和感」自体をテーマに作品化を図った。

尺八:黒田鈴尊
電子音響:宮本貴史
映像:長嶋海里
マネジメント:浅野剛